シグナル伝達と癌

 濡木研究室では、がんや感染症の構造基盤をあきらかにするために、これらに関連したタンパク質同士のインターフェイスにおける相互作用の原子レベル での解明を目指して研究を進めています。そして最終的には、がんや感染症を制御する薬剤の理論的設計に繋げていきたいと考えています。  発がんは、細胞分化のシグナルが抑制されているか、細胞増殖シグナルが恒常的に促進されていることで起こります。当研究室では、TGF-βシグナルを制御する調節因子の構造解析を行っています。TGF-βは、細胞の分化を促進する反面、細胞外マトリックスの蓄積、血管新生、免疫抑制を引き起こすことから細胞の癌化を促進する因子として注目されており、TGF-βの拮抗剤は癌の治療に有効であると考えられています。また臨床上多くのがんで変異が認められるチロシンキナーゼおよびその変異体の構造解析,NF-kBシグナルに直結した自然免疫(抗腫瘍免疫)に働くタンパク質群の構造解析も行っています。感染症に関しては、ウイルスに特異的なタンパク質とその拮抗化合物の複合体の構造解析を目指しています。以上の研究は,東京大学医学系研究科・病院,医科学研究所および製薬企業との共同研究で行っており,臨床に応用されるレベルを目指して研究を進めています。

これまでの研究成果