膜蛋白質

細胞は、細胞膜によって自身と外界を隔てています。その膜上に組み込まれたタンパク質(膜タンパク質)は、外界からの物質の取り込み、排出、情報伝達、エネルギー合成といった重要な機能を担っています。それら膜タンパク質の分子機構の詳細な解明には、立体構造が不可欠といえます。しかしながら, 疎水性領域に富んだ膜タンパク質は, 試料調製などの問題から, 一般的に立体構造決定は困難とされ、膜タンパク質の分子基盤の詳細な理解は, 近年、徐々に進展しつつあるものの、未だ限られた状況にあります。当研究室では、構造生物学にとっていまだ「開拓地」といえる膜タンパク質の分野を研究テーマの一角とし、徐々に成果を上げつつあります。

イオン輸送体

transporter1_tp4.gif

細胞は、金属イオン等、化学物質の外界環境からの取り込み・排出を厳密に制御しており、その機能は、生体膜に埋め込まれた輸送体タンパク質によって担われています。膜輸送体の遺伝子は全遺伝子数の10%にものぼることからも、その重要性がうかがわれます。 この輸送体が機能するメカニズムを解明するためには,その機能の本体である輸送の機構, 輸送する基質の識別機構,輸送の制御機構,3点を理解する必要があります.濡木研究室では,輸送体についてこれらを構造面から理解することを目的とし,現在、マグネシウム輸送体MgtEをはじめとして、主にイオン輸送体についてのX線結晶構造解析を行っています.

タンパク質膜透過・膜組込み機構の解明

 細胞質にて新規に合成されたタンパク質の膜を越えての輸送や膜への組込みは,すべての生物に共通した基本的な細胞機能の一つです。イオンや小分子の透過も許さない膜透過壁能を維持したままで,タンパク質という巨大な分子を膜透過,膜組込みさせる装置として,生体膜には Sec トランスロコン複合体(真核細胞では Sec61 複合体; 真正細菌では SecY 複合体)が存在しています。トランスロコンの駆動メカニズムは遺伝学・生化学的手法によって研究が進められ,Sec 複合体が緻密かつダイナミックな構造変化によって基質タンパク質を膜透過・膜組込みさせていることが解明されてきていますが,未だその詳細な分子機構の理解には至っていません。濡木研究室では,Sec 膜タンパク質群の構造を決定することによって,Sec トランスロコンマシーナリーの構造学的基盤を構築し,タンパク質の膜透過・膜組込み機構の解明を目指しています。

これまでの研究成果